オリジナリティ





 山田太郎。今年で23歳の大学生だ。この青年、ただの青年ではない。ひとたびボールを握れば、プロもはだしの剛球を放って、周囲を唖然とさせる。往年の名選手を彷彿させる天才的な才能の持ち主である。

以上が最悪な文章の例です。
この書き出しは1965年前後から流行したスタイルで、手垢にまみれまくっています。

助詞を省いた「この青年……」や、「ひとたびボールを握れば……」なども、散々使い古されたいいまわしで、工夫がありません。「天才的な才能の持ち主である」などといったくくりも、噴飯ものです。

こういった表現を、紋切型といいます。だれかが使い出し、それが広まった、公約数的な便利な用語ですが、古くさく、個性のかけらもありません。
「抜けるように白い肌」、「顔を背けた」、「踵を返す」、「嬉しい悲鳴」、「がっくりと肩を落とした」などもそうですね。

散々使いまわされているため、使いやすいし、わかりやすい。表現に悩む必要もないので、ついつい安易に使ってしまいがちですが、紋切り型が多用された小説はマンネリズムの見本です。行き詰ったときなど、この衝動に逃げてしまうことが頻繁にあります。
ありあわせのレディーメイドの表現に頼らずに、自分の実感に伴った新鮮な表現を使いましょう。








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